文献・資料
<WTW製Multi3000シリーズ活用事例>
標準活性汚泥法における有機物除去の基礎的研究(東京理科大学研究発表資料より)
東京理科大学大学院 柴崎 直也
東京理科大学 出口 浩
1.はじめに
わが国における下水処理場の処理方式は活性汚泥法およびその変法が大部分を占めており、本法が最も普遍的な下水処理方法である。活性汚泥法における有機物除去は、エアレーションタンク内で流動する活性汚泥が下水中の有機物を吸着および酸化分解することで行われる。
先行研究で、約10日間で活性汚泥が吸着した有機物が安定化することを考察してきた。しかし、単一の処理場の曝気槽末端から得た結果であるため、本研究では複数の処理場から採取した活性汚泥およびスキムミルクで馴養した活性汚泥(以下、人工活性汚泥とする)それぞれのOURを経時的に計測し、その特徴を定量的に把握および比較実験を行った。
2. OUR試験
複数の曝気槽の末端から採取した活性汚泥およびスキムミルクを基質とし回分式による馴養を行った人口活性汚泥を用意した。人口活性汚泥は、試験条件下においてMLSSを約2000~2500(mg/L)、BOD-SS負荷で表すと0.027 (kg-BOD/kg-SS・d)程度に維持できるよう調整した。
試験装置を右図の通りに組み、以下の手順でOUR測定を行った。まず、タンク内の活性汚泥をリアクターに流入させ、次にポンプの活性汚泥をリアクターに流入させる。ポンプを停止した後、リアクターに装着した光学式DO計によりDO値を経時的に測定した。OURはポンプ停止時におけるDO値の単位時間当たりの変化量として得られる。ポンプ稼働時間はリアクター内の汚泥を完全に代替させるため17分に設定した。また汚泥による酸素消費を十分確認するため、停止時間を33分に設定し、50分を1サイクルとした。本試験では試料を約21℃に保ち、DO値を1分毎、MLSSを約5日毎に計測し、試験期間を3週間とした。
図1 試験装置
3.結果
OUR試験の結果を図-2に示す。B処理場から2回、C処理場および人工活性汚泥は各1回OURの計測を行った。図中には各試料の試験結果を示した。曝気槽末端から得た活性汚泥と人口活性汚泥では安定化するまでに要する日数が異なった。この結果から流入する有機物の分解性が活性汚泥の有機物除去に影響することが考えられる。さらに内生呼吸時のOUR値は約0.02~0.04[mg/L/min]の範囲に集束することを確認した。これは各試料ともMLSSの値が概ね等しいことから、生物量に対する呼吸速度が等しくなったと考えられる。本実験から、流入する有機物の分解性やその除去に要する時間は異なるが、安定化時のOURは概ね一定になることが分かった。
図2 OUR試験結果(人口活性汚泥)
第56回下水道研究発表会 N-9-4-3 より抜粋
-掲載するにあたり、ご快諾いただいた東京理科大学の出口先生をはじめ関係者の皆様に深謝申し上げます。