文献・資料
分析の基礎知識 「pH/ORP 」
pH
pH は水溶液の酸性、アルカリ性の度合いを示す指標であり、水素イオンの活量の逆数の対数で定義されている。純水の pH は中性でほぼ pH7で有り、これより pH 値が小さいときは酸性、大きいときはアルカリ性である。
水はH2Oという分子式で表されますが、実際にもその殆どが、H2Oという非常に安定した分子の形で存在しています。ところが、ごく一部ですが水素イオン H+ と OH- というイオンの形で存在します。
どのような水溶液であっても、温度が一定で有れば、つねに水素イオン濃度[H+]と水酸イオン濃度[OH-]との間に次の関係がみられます。
[H+][OH-]= Kw =10―14(一定)
Kw は水の解離定数
[H+]=[OH-]= Kw = 10-7
pH は次の式で定義されています。
pH =-log10[H+]
[H+]= 10―7 ですから pHは7になります。
pHについて 日本工業規格 JIS Z 8802「pH測定法」に定義されています。pH は水の基本的な性質を示しており、環境面、工業面などあらよる観点から重要な項目である。下記に pH の各項目での水質基準を挙げる。
水道水質基準:5.8~8.6
水質環境基準:6.0~8.5(河川)・・・類型により異なる
6.0~8.5(湖沼)・・・類型により異なる
7.0~8.3(海域)・・・類型により異なる
排水基準(水質汚濁防止法):5.8~8.6
測定原理
・ガラス電極法
ガラス電極法とは、ガラス電極と比較電極の2本の電極を用い、この2つの電極の間に生じた電圧(電位差)を知ることである溶液のpHを測定する方法です。
ガラスの薄膜の内・外側にpHの異なる溶液があると、薄膜部分に、pHの差に比例した起電力が生じます。この薄膜を電極膜といいます。普通溶液が30℃の場合、2つの溶液のpHの差が1違えば、約60mVの起電力が生じます。通常、ガラス電極の内部にはpH7の液を用いますから、電極膜に生じた起電力を測定すれば、被検液、つまりpHを求めたい溶液のpH値がわかるわけです。
〇ガラス電極
ガラス電極は、pH応答性の電極膜、それを支えている高絶縁の支持管、ガラス電極内部液、内部電極、リード線及びガラス電極端子などから構成されている。
内部電極には、一般に塩化銀電極が用いられています。内部液には、一般にpH 7に調整した塩化カリウム溶液が用いられます。
〇比較電極
比較電極は、ガラス電極に発生した電位差を測定するために、ガラス電極と組み合わせて用いられるもので、水溶液のpHと無関係に一定の電位を示します。
液絡部、内部液、補充口、比較電極支持管、内部電極、電極リード線から構成される。
液絡部の種類によって、セラミック型、スリーブ型、ダブルジャンクション型などがある。
・校正
2点校正の必要性
ゼロ校正
ゼロ点校正によって電極スロープはそのままで出力を平行移動させ、pH 7に合わせる。
スパン(スロープ)校正
次にスロープ校正を行う。このために使用する標準液は測定範囲に近いpH値を持つものを選定する。アルカリ側を測定する場合pH 9 の標準液を、酸性側を測定する場合はpH 4 の標準液を使用。
ORP
ORP(Oxidation and Reduction Potential)とは 酸化還元電位のことであり、Redox Potentialともいいます。
・酸化と還元
銅を空気中で加熱すると、空気中の酸素と反応して黒色の酸化銅ができます。
このように、酸素を与える反応を酸化、反応生成物を酸化物という。
さらにこの酸化銅を水素を通じた管の中で加熱すると酸化銅は金属銅に戻ります。
このように酸化物から酸素をうばう反応を還元という。
また酸化銅が水素によって還元される反応は、水素が酸化銅によって酸化され、水になったということもできます。つまり酸化と還元とは、かならず同時に起こるものです。
酸化還元反応を電子の働きから
銅が酸化されるときは電子を放出し、酸素は電子を受け取って還元されます。
このことから、酸化還元の定義は次の通りです。
酸化されるということは電子を放出すること
還元されるということは電子を他からもらい受けること
このように、電子を失った状態を酸化体(Ox)といい、電子を受け取った状態にあるものを還元体(Red)といいます。一般式で書くと次のようになり、この式を酸化還元系といいます。
酸化還元系を含む溶液に、化学的に侵されにくい金属(例えば白金)を浸すと、その金属と溶液中の酸化還元系との間には絶えず電子の交換が生じるため、平衡状態が成立し、金属はある電位(E)を持つようになります。この電位(E)を酸化還元電位といいます。
なお、文献に記載されている酸化還元電位は水素基準で表示されていますが、これは基準水素電極の電位をゼロとするものです。この電極電位をつねに0と定めています。
・ORPの応用例
プロセスでの酸化還元滴定によるコントロールはpH計による中和滴定の考え方としています。中和滴定では一般にpH7付近に当量点があるのに対して、酸化還元滴定では、用いられる酸化体および還元体によって当量点が異なります。
メッキ排水処理(例)
シアン処理
酸化剤として塩素を用い、pH10以上で当量点は+230mV付近になります。
六価クロム処理
還元剤として重亜硫酸ソーダを用い、pH4以下で当量点は
+200mV付近になります。
・ORP測定におけるプロセス制御
ON-OFF制御:一つの調節点中心にON-OFF制御
交互動作制御:ONの調節点とOFFの調節点別々に設定
多段ON-OFF制御:調節点と弁をそれぞれ二つ以上設け制御
P . I . D制御:4~20mAの伝送出力を用いて、比例動作、積分動作、微分動作などの方法がある。