分析の基礎知識「全窒素・全リン」

富栄養化の原因物質である窒素及びリンは、湖沼にみられるアオコや内湾における赤潮を発生させる。これらの水質汚濁の原因物質については、湖沼ならびに海域に関して生活環境保全にかかわる環境基準及び排水基準が設定されている。さらに、水質総量規制制度においては、第5次水質総量規制から窒素及びリンが規制項目に追加され測定が義務づけられた。全窒素、全リンの環境基準と排水基準での測定方法を表1に示す。総量規制による全窒素、全リンの測定は、排水基準での測定法と同様である。

表1:全窒素および全リンの測定法

全窒素の測定方法

全窒素の測定方法は、工場排水試験方法(JIS K 0102)に定められている。

総和法

亜硝酸イオンと硝酸イオンに相当する窒素と、アンモニウムイオンと有機体窒素に相当する窒素とを求めて合計する。

紫外吸光光度法

試料をアルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウムで、約120℃、30分間加熱して窒素化合物を酸化分解し硝酸イオンにする。硝酸イオンによる波長220nmの吸光度を測定する。

硫酸ヒドラジン還元法

試料をアルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウムで、約120℃、30分間加熱して窒素化合物を酸化分解し硝酸イオンにする。この硝酸イオンを銅を触媒として硫酸ヒドラジンによって還元して亜硝酸イオンとし、ナフチルエチレンジアミン吸光光度法によって測定する(低濃度の場合に適用)。

銅・カドミウムカラム還元法

試料をアルカリ性ペルオキソ二硫酸カリウムで、約120℃、30分間加熱して窒素化合物を酸化分解し硝酸イオンにする。この硝酸イオンを銅・カドミウムカラムによって還元して亜硝酸イオンとし、ナフチルエチレンジアミン吸光光度法によって測定する(低濃度の場合に適用)。

総和法の測定方法

使用器具

蒸留装置、ケルダールフラスコ、分光光度法

使用試薬

硫酸(25mmol/L)(1+35)
水酸化ナトリウム(40g/L)(300g/L)
デバルタ合金
硫酸カリウム
硫酸銅(Ⅱ)五水和物
ナトリウムフェノキシド溶液

酸化マグネシウム
フェノールフタレイン溶液
アンモニウムイオン標準液(1mg/mL)
アンモニウムイオン標準液(10μg/mL)

全リンの測定方法

全リンとは、水中に存在するすべてのリン化合物の総量を表したものである。
全リンの測定法は、工場排水試験法に次の方法が定められている。

ペルオキソ二硫酸カリウムによる分解法

この方法は、高圧蒸気滅菌器を用いて、加圧下でペルオキソ二硫酸カリウムによる分解を行い、リン化合物をリン酸イオンにしモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法により測定し、試料中の全リンを定量する方法である。この方法は、分解しやすい有機物を含む試料に適用する。

硝酸・硫酸による分解法

この方法は、硝酸と硫酸を加えて乾固近くまで加熱蒸発して分解を行い、生成したリン酸イオンをモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法により測定し、試料中の全リンを定量する方法である。この方法は、多量の有機物を含む試料及び分解しにくい有機リン化合物を含む試料に適用する。

硝酸・過塩素酸による分解法

この方法は、硝酸及び過塩素酸を加えて加熱、濃縮して分解を行い、生成したリン酸イオンをモリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法により測定し、試料中の全リンを定量する方法である。この方法は、多量の有機物を含む試料及び分解しにくい有機リン化合物を含む試料に適用する。

水質総量規制における簡易窒素・リン計

 わが国においては2004年度の第5次水質総量規制から窒素・リンの測定が義務づけられた。日平均排水量が50m3以上400m3未満の事業場においては、簡易窒素・リン計測器による測定が認められている。一方、400m3以上の事業場では自動全窒素・全リン計測器での測定が行われている。

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