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分析の基礎知識「導電率」
電解質を含む水溶液は、電解質の量によって電気抵抗が変わる。導電率(Conductivity)とは、面積1m2の2個の平面電極を距離1mで対向した容器に電解質溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数を導電率といい、単位S/m(ジーメンス毎メートル)で表す。導電率は電気の通りやすさを示すもので、溶液中に含まれるイオン量によって決まる。
水溶液の導電率は温度によって変化する性質があるため、そのときの温度を明示する必要がある。溶液の導電率は、1℃の温度上昇で約2%変化する。そのため、多くの導電率計には温度補償機能が付加されていて、試料温度が25℃の時の導電率に換算した値として表示する(JIS K0130電気伝導率測定方法通則では「標準の温度は25℃とする」と規定)。
導電率は純水、ボイラー水や冷却水、あるいは農業用水、河川、湖沼などの水質管理に用いられている。
導電率の測定によって、水の純度、電解質の溶解程度、干潮河川における海水の影響などが分かる。
導電率計には、用途に合わせて卓上用、携帯用、プロセス用などがある。卓上用は電極に白金黒を使ったものが多く、精密測定に適し、携帯用やプロセス用の電極にはチタンやステンレスを使用している。
導電率の測定には、いろいろな形状のセルが使用されている。セルは電極の面積と電極の間隔から導電率に換算する場合の定数が決まり、この定数をセル定数という。セル定数と測定範囲の関係を表1に示す。電極の面積が大きく、電極間距離の短いセルはセル定数が小さく、導電率の低い溶液の測定に適する。一方、導電率の高い溶液の場合は、電極間距離の広いセル定数の大きいセルで測定する。
表1 セル定数と測定範囲(例)
水中に溶解している非電解質のケイ酸や弱電解質の有機物質は、導電率にほとんど関係しない。
導電率を測定する場合の誤差要因としては、次のことが考えられる。
①電極の汚れ
②固形物や気泡の介在
③導電率の低い溶液の測定にあたっては雰囲気ガスの溶解
などがある。